≪ものがたり≫​​

​季節は秋。マチコの元に祖母から母親の遺品が届く。毛糸玉、人形の小さな洋服、色鉛筆、スケッチブック・・手に取ると、スケッチブックから、一通の手紙がはらりと落ちる。
 

「1990年1月、店の前にて、君ちゃんの退職の日」

手紙には、2枚の写真が添えられていた。その写真には、若かりし頃の母の姿と、それから・・お母さんはここで働いていたの？ この人たちは誰？

1990年1月・・35年前・・この写真の頃、私はもうお母さんのお腹の中にいたことになる。お母さんは未婚で私を生んだ・・ここに行けば、何かが、分かるかも知れない。喫茶みみずく、か。

店に残された人形。
そこで出会う陶芸家の息子、涼介。
クレマチスの白い花をたどった時、
マチコと涼介は・・
み群杏子が描く、優しく、緩やかな幸福感。