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「クレマチスの小屋」によせて

星みずく:み群杏子

劇団大樹さんには、2005年の「ポプコーンの降る街」に始まり、本公演、小公演含めて何作もの作品を上演していただきました。最近は演劇活動とはほど遠い生活なので、川野さんからのお話がなければ、なまけものの私はもう芝居作品を書くことはなくなっていたかもしれません。

昨年の大樹さんの公演時に、来年は新作をということで、何も考えず「クレマチスの小屋」と先に題名を決めてしまったのも、何か一つ縛りがあれば、イメージが散漫にならず、書きやすいのではと思ったからです。ちょうど「クリスマスの小屋」というアイルランドの伝説をもとにした物語を読んでいた時で、思わず出てきたのが「クレマチスの小屋」でした。それでも題名を決めてしまったことを半ば後悔しつつ、クレマチスの白い花が絡まる小屋をイメージしながら書き進め、ストーリーと題名が重なった時にはほっとしました。

 

芝居でも物語でも、これが書きたかったんだ!というセリフが出てくる瞬間が私にはあります。自己満足かもしれませんが、そこでやっと自分が書く意味を見つけ、これでなんとか書けたと安心します。クレマチスの小屋の中にも、この一言のために私はこの作品を書いたのだと思えるセリフがあります。そこをみなさんがどんなふうに演じてくださるか、どんな風に感じてくださるか、本番をひそかな楽しみにしているのです。

子供の頃から詩や童話を書いていたが、1991年、戯曲 「恋心のアドレス」 が、文化庁舞台芸術創作奨励賞佳作を受賞し “劇作家” として活動を開始する。1992年にも 「ポプコーンの降る街」 が同賞を連続受賞。その後、Kiss-FM 「Story for Two」 のレギュラー執筆を担当。言葉のニュアンスを大切にしたポエティックな作風が特徴。生の悲しみおかしみを根底に持つ独特の作品世界を展開。2002年には、初の戯曲集 「微熱の箱」 が出版される。現在、自作をプロデュースするリーディングユニット 「星みずく」 を主宰。現在は劇団大樹の共同プロデューサーでもある。

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